トレーナーのためのクライアントメモ術:30人のクライアントをどう覚えておくか

クライアントメモの仕組みとは、毎回のレッスン直後の1分で、クライアントごと・種目ごとに短いメモを残し、次のレッスンの前にそれを見返す習慣のことです。クライアントが10人ほどまでなら、多くのトレーナーはすべてを頭の中で覚えておけます。それを超えると、誰の膝が痛むのか、誰にどの声かけが効いたのかが混ざり始め、クライアントはそれにすぐ気づきます。
なぜ10人を超えると記憶だけでは足りないのか?
週に25本のレッスンを担当していれば、1回のレッスンごとに少なくとも4〜5個の情報を耳にします。「今週は眠れなかった」「背中が少し張っている」「土曜日に結婚式がある」「この種目は好きじゃない」。週にすると100個以上の小さな情報です。1か月後には、そのほとんどが消えてしまいます。
問題は情報を忘れることではなく、別の人に結びつけてしまうことです。「膝の具合はどうですか?」と聞いた相手は、実は肩が痛かった。クライアントは丁寧に訂正してくれますが、心の中ではこう思っています。「この人は自分のことを覚えていない」。さまざまな国のトレーナー向けビジネス講師が口をそろえて勧めるのも同じことです。クライアントが30人いれば全員を覚えておくことはできないので、メモを取りなさい。ただ、どうメモを取るのかを説明している人はほとんどいません。
何をメモすべきか?
すべてを書こうとすると、1週間でやめてしまいます。次のレッスンやメッセージで役に立つ情報だけを書きましょう。メモはクライアント単位と種目単位の2つのレベルで考えます。
クライアント単位
- 痛みや不調: どこが、いつから、どの種目で出るのか。
- 生活の出来事: 試験、引っ越し、仕事の繁忙週、休暇、結婚式、病気。
- モチベーションと気分: 「今日は乗り気でなかった」「体重が落ちなくて落ち込んでいる」。
- 好み: 朝のレッスンが好き、トレッドミルが大嫌い、音楽をかけてほしい。
- 約束したこと: 「ストレッチのルーティンを送りますね」と言ったなら、これが最優先で忘れてはいけないことです。
種目単位
- 効いた声かけ: 「胸を天井に向けて」と言うと背中がまっすぐになる。
- 効かなかった声かけ: 「お尻を後ろに引いて」だと混乱する。
- 重量と感覚: 「60 kg x 8、最後の2レップはきついがフォームは崩れなかった」。
- 痛みのメモ: 「ブルガリアンスクワットで右膝に軽い痛み、踏み出し幅を短くした」。
- 変更点: 「肩のため、ベンチプレスをダンベルプレスに変更」。
| メモの種類 | 例 | いつ役に立つか? |
|---|---|---|
| 痛み | 「右膝、ランジで、2週間前から」 | ウォームアップと種目選びを計画するとき |
| 効いた声かけ | 「スクワットでは『足を床にねじ込むように』が効く」 | 種目を教え直すとき |
| 好み | 「有酸素はレッスン中ではなく自分でやりたい」 | プランを作るとき |
| 生活の出来事 | 「金曜にプレゼンがあり、ストレスを感じている」 | 次のレッスンの冒頭とメッセージで |
| 重量 | 「ヒップスラスト 80 kg x 10、余裕あり」 | 次のレッスンの重量を決めるとき |
| 約束 | 「自宅でやる3種目を送る」 | その日のうちに |
メモはいつ取るべきか?
ベストなタイミングはレッスンの直後、クライアントが更衣室へ向かっている間です。1時間後には細部の半分が消え、夜になる頃には5本のレッスンが頭の中で混ざってしまいます。
ルールはシンプルです。1分、最大3行。 レッスン中にクライアントの顔ではなくスマートフォンに向かって文字を打つのはプロらしく見えません。レッスン中は重量や回数などの数字だけを記録し、文章はレッスン後に回しましょう。
次のレッスンまで5分もない場合は、音声メモを残して夜に文字に起こします。ただしこれは例外にとどめてください。音声メモは溜まると聞き返さなくなります。
シンプルなメモのテンプレートとは?
毎回同じ順番でメモを書けば、書くのも速くなり、後で読み返すときも探しているものがすぐ見つかります。多くのトレーナーには、次の3行のテンプレートで十分です。
日付 / クライアント 体: 痛み、エネルギー、睡眠(一文で) 種目: 目立った1〜2種目、重量、効いた声かけ 生活 / 次の一手: 聞いた大事なこと、した約束
例:
10月12日 / エリフさん 体: 左肩、頭上で軽い詰まり感。睡眠不足(赤ちゃん)。 種目: ゴブレットスクワット 20 kg x 10 余裕あり。「肘を膝の内側に」の声かけが効いた。オーバーヘッドプレスを外し、ランドマインプレスを試して痛みなし。 生活 / 次の一手: 木曜は来られないかも。自宅でできる10分の肩モビリティルーティンを送る(今日中)。
このメモを書くのにかかるのは1分。読むのは10秒です。
メモを取り始めるのに最も自然な場面は、初回面談です。クライアントの過去のケガ、目標、制約を最初のレッスンで記録しておけば、その後のメモはその上に積み重なっていきます。初回面談で何を聞くべきかは、クライアント評価と初回面談ガイドで解説しています。
メモはどこに残すべきか?
場所は習慣ほど重要ではありません。ただ、クライアントが30人を超えると行き詰まる場所もあります。
- 紙のノート: 速いけれど検索できず、ジムに置き忘れることもある。
- スマートフォンのメモアプリ: クライアントごとにファイルを作れば使えるが、種目単位で探すのは難しくなる。
- WhatsAppで自分宛てにメッセージ: いちばん速く、いちばん埋もれる。
- Excel: 整理はしやすいが、ジムでレッスン直後に入力するのは手間がかかる。
- クライアント向けアプリ: メモ、プラン、記録が一か所にまとまる。
クライアント数ごとの各方法のメリットとデメリットは、クライアント管理の方法の比較で詳しく取り上げました。FitBrandではメモが種目単位で残り、双方向です。クライアントはトレーニングを記録するときに「この種目で腰がうずいた」と書け、あなたも同じ種目の下に自分のメモを追加できます。
次のレッスンの前にメモをどう使うか?
メモを取るのは仕事の半分です。残りの半分は読むことです。毎回のレッスン前、クライアントが来る前に30秒だけ最新のメモを見てください。そして次の3つを自問します。
- 前回のレッスンで痛みや不調はあったか?あったなら、最初のひと言はそれにする。
- 何か約束していたか?それを果たしたか?
- 生活の中で大きな出来事があったか?どうだったか聞いてみる。
クライアントが入ってきたときに「肩はどうですか?ランドマインプレスの後、痛みは出ませんでしたか?」と聞けば、そのレッスンで他に何もしなくても、クライアントは見てもらえていると感じます。この感覚こそ、パッケージを更新するときにいちばん効いてくるものです。継続率の全体像はクライアントの継続率に関する記事で確認できます。
メモはメッセージでどう役立つか?
メモのいちばん活かされていない力は、レッスン外のメッセージです。週に1回、メモを見返して2〜3人のクライアントに個人的なメッセージを送りましょう。
「エリフさん、こんにちは。金曜のプレゼンはどうでしたか?肩のルーティンはできましたか?よければ木曜は軽めにしましょう。」
「ムラトさん、先週は膝が少し痛んでいましたよね。今週、階段を上るときはどうですか?何か変化はありましたか?」
こうしたメッセージはテンプレートでは書けません。中に入っている情報は、あなたのメモにしかないからです。クライアントの目に違いとして映るのは、まさにこの部分です。
どこから始めるか?
- 今日から毎回のレッスン後に、1分・3行のテンプレートでメモを取る。1週間は1日も休まない。
- メモを一か所にまとめる。クライアントごとに1ページ、日付順で。
- 毎回のレッスン前に30秒で最新のメモを読み、最初のひと言をそこから選ぶ。
- 週末にメモを見返し、少なくとも2人のクライアントに個人的なメッセージを送る。
- した約束はすべてメモの最後の行に書き、その日のうちに完了させる。
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